やはり俺ガイルは最高の作品である

遂に、終に、ついに・・・発売したのです。待ちわびておりました。「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」待望の12巻。前作が2015年6月23日に発売してから、約二年間もの間、欠かすことなく熱を持ち続け、いつ新刊が出るのかとチェックを続けておりました。2017年4月に発売するかもと一時期話題になりましたが、結局発売はされず、非常に残念だった気持ちは未だ覚えておりますが、ちゃんと発売してくれたので許します、ありがとう!!

さて早速ですが、読み終えましたので感想をば。ネタバレ全開でいきますので、ご注意を

曖昧な三人の関係が加速する

11巻の終わりで、曖昧な三人の関係について強く踏み込みました。今作はその続きからとなります。ただ、二年間という年月で他作品にも色々かまけておりましたので、正直話の内容がうろ覚えです笑 とりあえず今作のあらす。

バレンタインデーのイベント、水族館での雪の日を経て、自分たちが踏み出すべき一歩を定める八幡たち。そんな奉仕部に、ある大きな依頼が持ち込まれる。その依頼に対して、雪乃が決意と共に出した答えとは……。――たとえ、その選択を悔いるとしても――。時間の流れがいつか自分たちを大人にするのかもしれない、出会いと別れを繰り返して人は成長するのかもしれない。でも、いつだって目の前には「今」しかなくて――。それぞれの想いを胸に抱えながら、八幡、雪乃、結衣が選ぶ「答え」とは。新たなる青春群像小説、物語は最終章へ。

遂に物語が終わってしまう不穏な空気が前作、前々作と続いていましたが、もう裏表紙のあらすじで明言しちゃいましたね。そうなんです。遂に最終章の物語へと発展していくのです。

基本的に、前作以前は1冊で1つの問題を解決する展開でした。しかし、今作では問題提起が最後にあります。なので、この巻単品での評価は難しいのです。コードギアスの一期を評価するくらい難しいのです(あの終わり方は、終わらせ方として型破りすぎるという意味で)。

様々な関係に踏み込む八幡

今作では、様々な関係性について言及していきます。八幡と由比ヶ浜の距離感だったり、雪ノ下と雪ノ下母との関係だったり、八幡と小町の付き合い方だったり。結果的な良し悪しは別にして、少なくとも行動して前に進んでいきます。捻くれて、建前ばかりを優先し、行動一つにも言い訳を用意してきた八幡が、見えないゴールを目指して前進しようとする姿が、とっても成長したなと感じました。

『たくさんの言い訳を張り付けて、俺たちはひどく短い距離を同じ歩幅でゆっくり歩いた』

言い訳してやらないのではなく、言い訳しても行動しようとしている姿に、なんかじーんときました。少しでも関わっていこうとする姿勢が、八幡の成長そのものです。

雪ノ下雪乃の初めての決断

「けれど、私は……、私が自分でうまくできることを、証明したい。そうすれば、ちゃんと始められると思うから」

曖昧で何一つ具体的にしてこなかった、三人の空気の中だけに存在した想いを、雪ノ下が具体的な言葉として選び決断します。その言葉が実は本当の想いを隠すための言い訳だったとしても、自身で決断したこの言葉を、八幡と由比ヶ浜はしっかりとこの言葉を受け止めました。

雪ノ下は自分でも何が本物か分からないんだと思います。でも、とりあえずでも、今まで思ってきた事は少なくとも本物だからと、口にします。次のステップへ進むために、自らの想いで行動し始めるのです。今まではどこか、依頼として受け身的に行動してきた事が、自分から進んで行動しようとする姿に、彼女の成長も感じました。

由比ヶ浜の優しさ

「違うよ、ヒッキー」「ゆきのんは……自分のちからでやってみたいんだよね」

今までは想いを曖昧にして空気の中に閉じ込めていましたが、由比ヶ浜は雪ノ下の想い言葉にします。そうやって、それが間違いなのかどうかを一つづつ確認し、何を目的とするのか本質を突き詰めて前進します。由比ヶ浜は色々と気づいていたけど、全部不確かなものだからと口にしてこなかった。それは三人の関係性についても言えることで、それに踏み込んだ由比ヶ浜は、曖昧な状況を良しとせず言葉を発したんだと思います。

ガハマさんの一人語りが作中ででてきますが、なんか悲壮感が半端ないです。色々可愛そうな子になっていく展開が予想できて辛いです…。由比ヶ浜は少しおバカで色々気付ける優しい子。だから、ガハマさんにとって、素敵な展開にしてくれる事を期待しています。

読みものとしての感想

冒頭でも言いましたが、今作では問題提起が最後にあり、何も解決していません。こっかた盛り上がっていくところです。なので、純粋な物語としての感想は述べないこととします。とはいえ、彼・彼女らが織りなす物語が面白くないわけがないです。愛読している方は当然買いとしても、そうでない方も是非とも”俺ガイル”をオススメします。これほどの青春作品はそうそうありません。

相変わらず面白い点

ところで、俺ガイルの一番の魅力といったら、やはり個性的なキャラクターだと思います。全員が全員良い味出してます。平塚先生や小町も、全てのキャラクターが生き生きしています。そして後半から出てきた”一色いろは”もその一人。いやあ、いろはす本当に可愛すぎます。

今日のいろはす

「はっ! もしかして先々『もう妹とは思えない……』って言って私のことを口説く気でしたかさすがに今の今だとちょっとときめきようがないのでまたの機会に出直してきてくださいごめんなさい」

はい、もうノックアウト~。最高にあざとい! 後半から出てきてなんだこのキャラクターは、って思っていたのにクリスマスの話で好感度うなぎ上り。今までの作品の中で最高の後輩キャラだと認識しております。

理想の教師像、平塚先生

他にも、平塚先生が素晴らしい。八幡の成長を促しているのは平塚先生といっても過言ではありません。

「……比企谷、ごめんね。それでも私はずっと待つよ。……だから、言葉にしてくれ。」

今作の有難いお言葉は上記の通り。言い訳で行動しようとする八幡に対して、本当の想いを確認しようとしている、そんな言葉なんです。先生が生徒に教えることって勉強だけじゃあないですよね。平塚先生は本当に素晴らしい、理想の教師だと思います。

少しもったいない点

雪ノ下のなじりが少ない

俺ガイルの面白さの一つとして、八幡と雪ノ下の言葉の掛け合いがあります。それが今回めっきり少ない。文化祭当日の裏方作業で、実行委員全員が聞いているイヤホン越しに聞いている中での八幡と雪ノ下のやり取りとか好きだったんですけどねえ。雪ノ下が自分でやろうって決めてストーリー上別空間にいる事が多いってのは理由の一つなんですが、やはり雪ノ下のなじりがないと、楽しみが半減します。

少し文章がくどくなった…?

キャラクターの掛け合いもそうですが、地の文というか八幡の一人称での語りが秀逸な点があります。今作だと例えばネタバレに関する話題で、『「マジかよ、この武将死ぬのかよ! 大河ドラマのネタバレ食らったわ!」などと嘆いてはいけない。今まで死んでない戦国武将は一人もいない。』とか。読んでると、フフッてなる文章が多いです。あと、この時期やってるアニメなんかのパロディ的な言葉も面白いです。

それはそれとして、今作はやたらと地の文が量として多くなったと思います。感情が強く動くシーンなどでは、その想いが冗長的に語られる文章はよくあると思いますし、全然良いと思います。しかし、小さな気持ちの動きにも、今までの1.5倍くらいの文量を割いている気がしました。物語がテンポよく動かなくなり、物語にのめり込めなくなる箇所が少々ありました。まあでも全体として面白いので、これは細かい話です。

気になる次回作

今回の物語を上下巻とすると、今作は上巻にあたる箇所になります。全体的な構成は既にできているでしょうし、そこまで間が空くことはないのでは? この二年間はガーリッシュナンバーなどあり、他の仕事をされていたからだと思いますが、ようやっと今作が世に出てきた訳ですから、期待せずにはいられません。今年度中に出たら超ハッピーです。

一から読み直して次巻に備えたいです。ではでは~