サクラウエストを全話視聴しました。いやあ、アニメも見れるamazonプライム素晴らしい。それは置いておいて、サクラクエストです。『花咲くいろは』『SHIROBAKO』に続く、P.A.WORKSの「お仕事シリーズ第3弾」と銘打たれているこの作品。いろはやSHIROBAKOとは、だいぶ毛色が違っていましたが、しっかりと楽しめましたので感想をば。
あらすじ・印象に残ったシーン
amazonのあらすじひっぱってきました。
主人公、木春由乃(こはるよしの)は、田舎から上京し短大の卒業を間近に控えた、いわゆる普通の20歳の女の子。東京には何でもあって、きっと特別な何かになれるのではないかと夢みて、30社以上の面接を受けるも、未だに内定はない。銀行の残高は980円。このままでは、田舎帰って普通のおばさんになってしまう・・・と葛藤していたそんなある日、以前、一度だけ働いたことがある派遣事務所から、「地域の町おこしの一環で国王をやってほしい」との依頼がある。よくわからないが軽い気持ちで依頼先の間野山市に向かうことにした。一時的に日本中でブームになるも、バブル崩壊に合わせて今ではほとんど見ることの無くなったミニ独立国。間野山市は、今なおミニ独立国を続けている、廃れた残念観光地だった。そんなこんなで、由乃の”普通じゃない”お仕事生活がはじまった。
あらすじにもある通りですが、主人公は”国王”なんですw といってもそんな地方の町にそんな国王ががいるようなファンタジー作品ではありません。国王は、所謂観光大使です。昔、○○王国という設定が流行ったらしく、それをなぞって町で観光地としての”王国”を立ち上げ”国王”を任命した、そういった設定です。”サクラクエスト”のタイトルにあるサクラは、舞台である間野山の名所であり、5人の始まりの場所。それと王国といったRPG的要素と5人の物語を組み合わせてクエスト。合わせて”サクラクエスト”といった感じだと思います。
試行錯誤してこそ仕事というもの
そもそも私は町興しという仕事が具体的にどんなものか知りませんでした。町興しを知っている人にとっては、アニメの中の仕事は当たり前にやっている事で、何ならもっと工夫してやってるよ、といった声があるかもしれません。それでも、こういった試行錯誤の集大成として私たちの町があることを実感しました。
主人公たち観光協会のメンバは様々な町興しを試行します。ざっとこんな感じです。
- 町の名物菓子を捌くためにHPを立ち上げ、CMも作成。
- ゆるキャラならぬ、ぬるキャラの大会に出場
- 地域の強みを探して彫刻をピックアップ
- 映画のロケ地として提供
- B級グルメならぬC級グルメの開発
- 田舎のお見合いツアー
- 民謡の復興
- 町興しのTV取材
- アーティストを呼んでコンサート
- 古民家を宿泊施設化
- 田舎ならではの珍しいイベント池干しを宣伝
- 限界集落へのアプローチ「デジタルアーカイブ」
- 廃校をテナントとして開放する
- 祭りの復活
考えつく限りの試行を繰り広げていますw 一つ一つに対して、分からない状態からスタートして形にしていきますが、マニュアルがないので失敗してばかりです。それでも、何とか周りの協力を経てそれぞれのイベントを成功させていきます。
序盤でHPやCM作ったりとしていますが、色々やってみるっていうのは、仕事のあるべき形だと思います。これって仕事になるんじゃねえか、もっとこうしたら良くなるんじゃねえか、って昔の人もこうやって試行して仕事にしていき、今の会社が形作られてきたんだなと感じました。
主人公の性格もあってか、何かと猪突猛進しています。失敗もよくするので、どこからその金出てんだ、税金だよ! とか思っちゃわないわけでもないですが、こうやって頑張ってる姿見たらどうでもいいんです。そもそも、こうして国からお金もらって働くのがお仕事なんですから、それを選び勝ち取った彼・彼女らには何を言えるわけでもないでしょう。身近で窓際族してる無能な会社員と同じです。国の金を無駄に使うか会社の金を無駄に使うかの違いです。しかし、なんだかんだと意外と有能なこの集団w 最後はちゃんと形にしてさらに粋な計らいもできてたりします。古民家燃やすところでの、映画のスペシャルサンクスに名前載せるところとかまさにそれです。思わず感動しちゃったじゃねえか。
インターネットをうまく活用しているシーンが多い
序盤のホームページ立ち上げだったり、CMをユーチューブに投稿しているところだったりと、何かとインターネットを活用しているのが個人的にモノ珍しかったです。何となく、所謂田舎にある地域がインターネットと結びつくのって、なかなかイメージ付きません。実際は私が想像している以上に、このアニメ以上に、うまく活用していて広報や商法に活用していたりするのかもしれません。そうだったらごめんなさい苦笑 ただ、こうやって様々やっているかも、って知れただけでもふとした瞬間のアンテナに発展するかもしれません。それだけでも貴重だなと。
また、限界集落に対してのアプローチとして、インターネットを活用してコミュニティを作成し、様々な手続きだったりコミュニケーションを効率化しているシーンがありました。インターネットをより身近なものとすることで、限界集落に住む老人たちが自主的にネットに動画を投稿していく。地元の郷土料理の作り方だったり、作物の育て方など、先人達の知恵をネットに残していく。デジタルアーカイブというキーワードを出しましたが、それです。見ていて感じましたが、私達が考えている以上に、非常に価値のある資産だったりするのではないでしょうか? 新しい文化や技術と融合しながら、古い文化も大切にしていく。なにか、非常に魅力的なことと感じました。
主人公は”地域”そのもの
田舎が舞台とあって、よそものに対する考えなんかもアニメで取り出されています。主人公の由乃はまさにその”よそもの”です。国王に就任したからといって当然すぐに溶け込める訳ではありません。様々な行事を通して周りと関わり合い、時にぶつかりあいながら、共に成長していきます。
町興しは観光協会の人間だけで成し得るものではありません。町全体が一丸となり同じ方向を向いてこそ、成功するのです。始めはバラバラだった地域の人たちが、由乃含めた主人公たちのがんばりによって次第と協力関係になり、心を突き動かされて、町が一丸となって町興しのために奮闘します。その過程が、とてもキレイで、地域の暖かさを感じました。
中でも、限界集落の知恵の一つである釣り灯篭(夜に灯篭を家の前に釣ることで、周囲の家の安否を確認できる)を、寂れてしまった商店街に展開し、その寂しさを和らげると共に一体感を演出するシーンは、何だか感動しました。こうやって町の繋がりを取戻し、町興しに挑んでいっているのです。
全体的な感想
冒頭でも言っていますが、かなり楽しめた作品でした。特に、国王という突拍子もない存在がかなり良いエッセンスになっていました。
限界集落の人たちがバス路線廃止に反対してデモを起こしてネット中継しているシーンです。それで、国王たる由乃はその人質で、同じようにネット中継に写っています。なんだかとても間抜けなシーンに見えませんかw? こうした感じで、なんで国王いるんだ的な、という場違い感が非常に良い味を出していました。
また、純粋な想いで、つまり地域を盛り上げようと必死になって、仕事を行っているのがとても伝わりました。町興しで良かれとやったことが、本当に地域の人達のためになるかどうかは分かりません。作中にあった野外ライブのシーンには取り上げられていなかった内容ですが、そうしたイベントでのゴミの問題など地域によってはあるんじゃないでしょうか? それでも、地域のためになると信じて時に周りとぶつかりながら、皆で同じ方向を向いていく様がとてもキレイでした。いやあ、自分もこんな想いで働きたい…。
上記に上げているように、様々な町興しを試行しています。これは、全国の地方団体にとって良いモデルケースになるのではないでしょうか? てか、完全に知らないだけなんですが、これ全部試してる地方ってあるんだろうか? そう思うと、少なくとも町興しの手段一覧として、かなり参考になる気がします。また、役所の観光系部署じゃない方も、地域事業への有用な一つのアプローチとして参考になることでしょう。
キャラクターが少し弱いか…?
十分に面白いこの作品ですが、しいて言えばキャラクターが少し弱い? SHROBAKOのラストで主人公が等身大の言葉でスピーチしますよね。あの脚本すごいと思います。あと、声優志望のずかちゃんが土壇場で第三飛行少女隊のCV勝ち取ったシーンありますよね? あれはもうボロ泣きでした…。
今作は、上でも述べていますが、どちらかというと”地域”そのものへの焦点になっている気がします。とりわけ主人公たちの中身が無い訳ではないのですが、なんかこう、薄い仕上がりになっているのが否めません。観光協会会長や、商店街のババアw(凛々子の祖母) なんかも非常に強いキャラクターしてますよね。それが主人公たちを食ってるって感じもしなくはないですが、強烈な過去やそれに向き合う重要なシーンがあまりないため、主人公たちの影がどこか薄く感じているんだと思います。
十分にオススメできる作品です
とはいえ、上に述べたように、非常に魅力のある作品となっております。現在は都会に住んでいますが、これを見て、地元で何かできるような仕事を探してもいいかなって思えるようになりました。仕事で疲れている人、何のために仕事をしているのか分からなくなっている人は、一度このサクラクエストを見て、こういった仕事もあるんだなと感じてみてください。
では、良いアニメライフを~。